一ツ橋⑨ 企業のすべての活動は、
 企業のすべての活動は、経験から蓄積されたなんらかの知識に基づいてなされている。企業はその日常的活動を通じて、自らの知識を検証し、事実に合わせないときには、修正したり新しい知識をつくり出していく。
 その意味で企業の活動は、競争過程を通じた、独自能力としての情報や、知識の創造・実現・組み替えであり、そのためにいかなる「知」の方法論を構築するかが、経営の基本的問題である。ここでいう「知」の方法論とは、情報や知識を獲得し、創造・蓄積するための方法的な体系のことである。
 知の方法は、古くから哲学の主題であり、基本的には日常生活の延長線上に生まれてきた。デカルトは「方法序説」で、人生を成功裏に過ごすための方法として、1.実証で真であると認められないことは真としない、2.問題は出来るかぎり細かな部分に分割する、3.容易なものから複雑なものの認識に至る、4.部分のとりこぼしがないようにチェックする、の四つで十分だと言っている。
 これは、科学的方法のエッセンスを示しており、このような分析的・観念主義的方法は、欧米人の日常生活の方法のまさに延長線上にあることを、彼らとの会話などを通じて経験している。

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