対策④  言葉は常に変遷するものだが、
 言葉は常に変遷するものだが、最近、ひどく奇妙な使い方に思われて首を傾げることがあった。丁寧な挨拶として使われる「とんでもございません」という言葉がそれである。「とんでもない」は、「せつない」などと同じ形容詞に当たり、末尾の「ない」を「ある」の反対語として扱うことは不可能だ。「せつない」を丁寧に言うときは「せつないことで(ございま)す」となるのと同様、「とんでもない」も「とんでもないことで(ございま)す」とするのが正しい。
 しかし、誤った用法でも多くの人が使うようになると、誤用が慣用として許容されるようになる。辞書を引くと、『小学館現在国語例解辞典』には、「とんでもございません」は誤用に基づく慣用であるとの注意書きがあり、『三省堂国語辞典』には、「とんでもないことでございます」の新しい言い方、とある。現在、慣用化が進行中であると言えるようだ。
 文化庁の『言葉に関する問答集14』によると、「とんでもない」には形容詞から転じた挨拶語としての用法があり、「とんでもございません」が現在のように一般化した段階では、不適切な言葉として退けるのは好ましくないということで、容認の方向にあるらしい。

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