技⑨ 見知らぬ街を訪ねるとき
 見知らぬ街を訪ねるとき、どのように方向感覚を決めるか、何を手がかりに歩くかは、各人によってさまざまにちがいない。
 まず、あなたは地図を入手する。その地図を眺めるとき、あくまで自分の目的地を意識して、目先の目印を頭に入れる方法がある。が、これでは万一目印を見失ったときに道に迷いやすい。
 そこで東西南北の方向感覚が役に立つこともある。あるいは地形の特徴にも助けられるだろう。北を上にして、山がどちら側にあるか。河は何処から何処へ流れるのか。鉄道はどのように街を貫いているのか。方角を意識して地図を眺めるとき、心なしかぐっと未知の世界が身近になる。また、行動の感覚で推し量る街の大きさも重要だ。
 街は地域を問わず、開けた平野や河に沿って発達したところが多い。都市計画によって整然と道ができていれば、突然の訪問でも自在に街を歩け、なおのこと散策は楽しい。逆にモザイクのように入り組んだ路地なら、予測を裏切られる心地よさがある。
 そうして街の匂いを嗅ぎつつ実際に歩けば、デジャヴュのような錯覚に陥り、ふと、過去に訪れた街の構造と、無意識に比べている自分に気付く。懐かしさを重ね合せ、これから探す新たな発見と新しい出会いに胸を膨らませるのである。

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